薬剤師×デジタルヘルス|医療アプリ業界で活かせる知識とキャリア戦略

「医療アプリの開発に関わってみたい」「薬剤師としてもっと広い視野で仕事をしたい」――
そう感じたことはありませんか?
近年急成長を遂げるデジタルヘルス業界では、薬剤師の知識と現場経験を必要とするポジションが増えています。
監修、薬機法チェック、UX設計など、ITの専門家ではなく“医療の現場を理解している人材”が求められているのです。
この記事では、医療アプリやデジタルヘルス領域で薬剤師が関われる仕事内容、必要なスキル、未経験からの転職ルートまで、キャリアの可能性を徹底解説します。
なぜ今、医療アプリ分野で薬剤師が求められるのか
医療アプリやデジタルヘルスの世界で、薬剤師が必要とされる場面が確実に増えています。
一見「ITや開発の専門家が主役」のように思えるこの分野で、なぜ薬剤師の専門性が注目されているのでしょうか?
急成長するデジタルヘルス市場の背景
2020年代に入り、国内外でデジタルヘルス関連市場は爆発的に成長しています。
- 厚労省のオンライン診療推進
- PHR(パーソナルヘルスレコード)
- **服薬管理アプリ・治療用アプリ(DTx)**の急増
- スマートフォンによるセルフモニタリング文化の定着
これらの変化を背景に、医療従事者の視点を持ちつつ、ユーザーに寄り添える専門家が求められるようになりました。
医療アプリは「医療行為の代替」ではなく、「医療の質・継続性を高めるツール」として位置づけられており、そこに薬剤師が持つ“現場感”と“専門性”がフィットし始めています。
UX・薬機法・安全性の視点に薬剤師が貢献できる理由
医療アプリ開発において、薬剤師が関与できるフェーズは実に多岐に渡ります。
1. UX改善への現場視点
- 「服薬タイミングをどう設計すべきか?」
- 「患者が継続しやすい記録導線とは?」
こうした課題に、薬歴指導・服薬指導の現場経験が活きます。薬剤師は**“患者の行動を読み解くプロ”**でもあるのです。
2. 薬機法・薬事監修
アプリが「医療機器プログラム(SaMD)」に該当する場合、薬機法対応が必須。
- 表現チェック
- 適応範囲の整理
- 添付文書の連携
これらは、薬事知識を持つ薬剤師が最も信頼される領域です。
3. 安全性・副作用の管理観点
医薬品との連携アプリや疾患管理系アプリでは、副作用報告や適正使用管理の体制づくりに薬剤師が関与するケースも増えています。
医療アプリの成否は、「技術力」だけでなく「医療的な納得感」と「現場の信頼」を得られるかにかかっています。
その橋渡し役として、薬剤師の存在が今、求められているのです。
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薬剤師が関われる具体的な職種と仕事内容
「医療アプリやデジタルヘルスって、ITエンジニアだけの世界では?」
そう思っていた方にこそ知ってほしいのが、薬剤師が関与できる実務領域の広さです。
特に近年は、「薬機法対応」や「医療の実用性・UX」などの観点から、薬剤師の専門知識と現場感覚に強い期待が寄せられています。
医療アプリ開発・監修における薬剤師の役割
1. 薬機法チェック・適正使用ガイドライン対応
治療用アプリ(DTx)や服薬支援アプリの開発では、薬機法や関連ガイドラインに抵触しない記載・表現が求められます。
薬剤師は、以下のような工程で監修・アドバイザーとして参画可能です。
関与フェーズ | 具体内容 |
薬機法レビュー | 医療機器該当性の確認、広告表現の適正性判断 |
添付文書連携 | アプリ内容と薬剤情報との整合性チェック |
UI設計助言 | 服薬手順やアドヒアランス改善設計の支援 |
薬剤監修者表記 | 法規上の責任者として掲載されるケースも |
2. ユーザー導線設計への医療的助言
服薬記録アプリや患者教育アプリでは、「どうすれば患者が迷わず行動できるか?」というUX設計において、薬剤師の指導経験が活きるシーンが多数あります。
スタートアップ・ヘルステック企業での求人例
実際に求人が出ている職種の一例をご紹介します。
企業タイプ | 職種 | 求人内容の傾向 |
医療アプリ開発企業 | 薬機法監修担当(正社員/業務委託) | 表現レビュー・法務部門との連携経験がある薬剤師が歓迎される |
ヘルステックSaaS企業 | コンテンツ監修・UX設計アドバイザー | 患者目線での指導経験を持つ薬剤師に需要あり |
スタートアップ(治療用アプリ) | 薬剤師リーダー職 | PMチームの一員として開発初期から参画。社内唯一の医療職というケースも |
ポイント:
- フルタイムだけでなく、副業・業務委託ベースの求人も豊富
- 薬局勤務経験+文章スキル(note等)でオファーされる事例もあり
- 臨床試験や市販後調査に関わった経験は、デジタル臨床との親和性が高く評価される
「技術的に開発できること」ではなく、「医療的に実用に足るか」を見極める力――
それが薬剤師の価値であり、スタートアップの成長を左右するキーポイントになりつつあります。
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ITスキルがなくても挑戦できる理由と準備法
「ITやプログラミングの経験がない自分に、デジタルヘルス分野は無理なのでは…?」
そんな不安を抱えている薬剤師の方は少なくありません。
でも実際には、薬剤師の“医療職視点”そのものが求められるポジションが多く存在しており、ITスキルが必須ではないケースも多いのです。
医療職視点の評価が重視されるポジションとは
デジタルヘルスや医療アプリ領域には、「技術的に作る人」だけでなく、「正しく、わかりやすく伝える人/使う人の目線でチェックできる人」が必要不可欠です。
以下のようなポジションでは、薬剤師の実務経験が“IT未経験”を補って余りある強みとして評価されます。
ポジション例 | 求められる視点 | 薬剤師経験が活きる理由 |
薬機法・表現チェック | 法規・リスク判断 | 法律+現場運用のリアルを両立できる人材 |
UX・UI設計レビュー | 継続率・操作のしやすさ | 服薬支援や指導経験の知見がそのまま役立つ |
アプリ監修(医療コンテンツ) | 患者教育・疾患理解 | 解説の正確性と読みやすさのバランス感覚 |
マーケティング支援(メディカル) | 訴求ポイントの選定 | 「薬剤師から見て信頼できる表現」が必要 |
つまり、“現場をわかっている非エンジニア”としての薬剤師が、あらゆるチームにとってのキーパーソンとなりうるのです。
薬剤師向けおすすめの学習ツール・資格・実務スキル
とはいえ、「まったくの未経験」では不安…という方に向けて、現実的に取り組める学習手段をご紹介します。
① 最低限押さえたいIT基礎知識
- ITパスポート(国家資格):IT初心者向け。薬機法や情報管理なども含み、現場理解にも有用
- Excel・Googleスプレッドシート関数:開発に入らずとも、実務で必須となる「設計→テスト」時に使える
- SaaS構造やクラウド概念の理解:アプリの裏側を“なんとなくでも”理解しておくと、チーム内会話で差が出る
② 薬剤師におすすめの学習ツール
分野 | ツール/サービス | 特徴 |
デジタル基礎 | 【STUDYing ITパスポート】 | スマホ中心・通勤時間に最適。スキマ時間で合格可能 |
ヘルスケアIT英語 | 【ELSA Speak】 | 医療用語・発音補正に強く、外資系スタートアップにも有利 |
薬機法・医療ビジネス知識 | 【メドレー・ケアネット動画】 | 現役医療職向けの最新知識を学べる。監修・連携時に役立つ |
③ 実務スキルを積むには?
- 医療ベンチャーやアプリ系企業の業務委託・副業求人に挑戦
- 自主的にnoteやブログで医療アプリ解説を書くなど、ポートフォリオ型実績も有効
- 薬局・病院にいながら医療IT領域での社内改善提案やDX導入サポートも実績になる
ITスキルは「ゼロから完璧に」ではなく、医療職として関わるための最低限の理解と関心があれば十分スタート可能です。
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未経験から医療アプリ業界に転職する方法
「デジタルヘルス業界に興味はあるけれど、自分は未経験だし…」
そんな一歩を踏み出せずにいる薬剤師の方も多いのではないでしょうか。
実際、医療アプリ業界では“医療の現場経験者で、ITはこれから”という人材が強く求められています。
特に薬剤師は、医療知識×論理的思考×薬機法リテラシーのバランスが評価され、未経験からのキャリアインも十分可能です。
求人の見つけ方とエージェント活用のポイント
求人が見つかる主なチャネル:
チャネル | 特徴 |
特化型エージェント | 医療×IT領域に強い担当者が、法規・監修系ポジションを把握している |
スタートアップ求人特集(Wantedly・Greenなど) | ベンチャー志向が強い人におすすめ。副業・業務委託あり |
LinkedIn・X(旧Twitter) | CEOや現場エンジニアが直接投稿していることも多い |
エージェント経由の非公開求人 | 医療系スタートアップやデジタル治療系アプリ開発企業で多い傾向 |
エージェントを活用する際のポイント:
- 「薬剤師としての専門性+法規やUXへの関心」を明確に伝える
- キャリアシートに「医療アプリに関心があること」を明記しておく
- 「薬機法知識の活用」「添付文書レビュー経験」などを言語化して相談する
- 初期は副業・業務委託の案件紹介からでもOK
未経験転職の成功者の多くが、**“自分の言語化”ד業界理解の深さ”**で他候補者と差をつけています。
監修・法規チェック・教育系ポジションからのキャリアイン
以下は、薬剤師が実際に未経験からキャリアインしやすい“入り口職種”の代表例です。
職種カテゴリ | ポジション | 関われる仕事内容 |
薬機法監修 | SaMD・アプリ表現チェック | 法規適用範囲の整理、記述表現の確認 |
教育・啓発コンテンツ制作 | 疾患啓発・服薬指導支援アプリの医療監修 | 薬剤情報監修、患者視点での記述改善 |
UX・UI助言 | 医療アプリの継続率向上サポート | 服薬導線・副作用チェック導線のフィードバック |
メディカルサポート | スタートアップのPM支援・QA対応 | 医療職の立場から仕様策定や問い合わせ対応 |
特に注目なのが、「開発・設計には直接関わらないが、“正しく・伝わるようにする”役割に長けた薬剤師」の採用ニーズです。
副業からスタートして信頼を積み、後に正社員化された例も少なくありません。
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活躍する薬剤師の特徴と“向いている人”とは
医療アプリ・デジタルヘルスの分野では、薬剤師の役割は「薬の専門家」にとどまりません。
むしろ求められるのは、**“医療現場と開発現場をつなぐ翻訳者”**のような存在です。
では、実際に活躍している薬剤師にはどんな共通点があるのでしょうか?
「現場の課題を翻訳できる」人材の重要性
医療アプリの多くは、「テクノロジーは作れるが、現場を知らない」開発者によって生まれています。
そのため、「現場ではこんな風に困っている」「こうすれば患者さんに伝わりやすい」という
“医療の現実”を開発チームの言語に変換して伝えられる人材が極めて重要です。
活躍している薬剤師に共通する能力:
- 現場視点の課題抽出力(「このUXでは高齢者が迷う」など)
- 医療用語とIT用語の“両方の理解”
- 自分の経験を構造化し、開発に活かす力
薬歴記録や服薬指導の中で得た「感覚」を、開発会議で「仕様」に落とし込める人。
それが、医療アプリ業界で求められる“実践型の薬剤師”です。
「コミュニケーション力」「探究心」が評価される業界文化
デジタルヘルス企業、とくにスタートアップでは、**「肩書きより行動」「医療職でも事業理解」**が当たり前。
評価されるのは、次のようなソフトスキルと姿勢です。
特徴 | 理由 |
話す力・伝える力 | IT・開発・経営など、多職種との連携が必須 |
探究心と変化への柔軟性 | 毎月のように方向性が変わるフェーズも多い |
自走力とチーム思考 | 指示待ちでなく「必要な情報を自分で探す」姿勢が評価される |
医療とビジネスの両面への好奇心 | 「患者のため」と「プロダクトの成功」を同時に考えられる |
薬剤師という「国家資格+専門性」に加えて、**“オープンマインドな姿勢”や“共創マインド”**がある人は、どの企業でも歓迎される傾向にあります。
「自分はまだ完璧じゃないから…」と考えるより、
「その視点、チームに足りていなかった!」と歓迎されることが多いのが、この業界の特徴です。
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薬剤師×医療×スタートアップ企業紹介
まとめ|デジタルヘルスは薬剤師にとって“第三のキャリア”になりうる
医療とITの交差点に立つ、デジタルヘルス分野。
そこには、現場経験のある薬剤師だからこそ果たせる役割が、確実に存在します。
- 技術に頼りすぎず、医療の「わかりやすさ」と「現実感」を届ける
- 薬機法や患者視点から、安全性と継続性を見極める
- “専門職としての信頼”をプロダクトに乗せる
いずれも、いま求められている価値であり、未経験からでも挑戦可能なポジションです。
「少しでも気になる」「なんとなく、自分も関われる気がする」
― そう感じた今こそ、“次の一歩”を考えるベストタイミングかもしれません。
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